水沼・桜庭・春木 006

水沼さん、桜庭さん、おつかれさまです。

○生徒に つけてもらったニックネームは 現時点で2個(!)あと、授業中の口癖が「一旦(いったん)」だということに自分で気がついて、それやめたいなー と思ってるところです。それと 桜庭さん、原稿料で向田邦子のエッセイを買われたとのことですが、僕いまちょうど、授業で『字のない葉書』を教えているところです。奇遇ですね!

◯学校のことは詳しく書けないから、家に帰ってからのことを書くと・・・・・・最近 夜ご飯は簡単に済ませて、シャワーだけして、そのあと、3月末に浜乃木のハードオフで買った 青色の2DSでルイージマンション2』を 少しやってから 寝てます。ルイージの挙動がいちいち可愛くて、癒されます。僕が ゲーム中に ふと思い立って、別のことを始めたりして、操作をしばらくサボったりすると、ルイージがメインテーマを鼻歌してくれたり、リュックの底を持ち上げてソワソワ揺らしたり、目を擦ったりしてて、ほんとにルイージを"今"待たせてる、みたいな感じがして 楽しいですよ。

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○オヤ・マーという博士が、ルイージに対して マジで理不尽に仕事を押し付けてくるんです(クモの巣掃除とか 給水システムを復旧しろとか シンプルにあれ取ってこいとか)。ルイージは、ため息ついたり肩落としたりして あからさまに嫌がってみせるんだけど、結局 行くし頑張るし(操作してるのは俺だけど・・・)、オバケを退治できたりミッションをクリアすると、本当に、心の底から嬉しそうにガッツポーズするんです!そのマインドを見習いたいなーって、いつも思います。

◯それで、このあいだ初めて、学校の戸締まり当番をしました。暗闇が苦手なので、明るいうちにと思って、18:25くらいから見回り始めたのに、もう遅くて、暗いところは暗くて、スマホのライトで照らしたりしながら進めました。ストーブや電気が付けっぱなしになってないか? 蛇口は閉まってるか? ボイラー室を見たり、虫に怯えたり、ゴミを見つけて拾ったりするうちに、なんか『ルイージマンション』みたい!と思えてきました。何事も楽しまなくちゃ、ということですよね。

◯DSは、ちょっと触るだけで、すぐに小学生くらいの自分に戻れたような気がして、嬉しくなります。小2の頃とかは、お父さんが持ってたピンクのDSをたまに貸してもらって マリオカートの50ccグランプリでひたすら走るのが楽しかった。小3くらいで自分用の3DSポケモンのソフトを買ってもらったときは本当に幸せだったし(それは壊れたっきりどこかへ行ってしまったけど)、高2くらいで 2DSを買って 昔持ってたソフトを遊び直したり、それを、【町田康宇治拾遺物語を現代語訳した本】が欲しくて それを買うためにブックオフに売っぱらったりしたのも、良い思い出です。

吉本ばなな の『キッチン』、ゴールデンウィークで読もうと思います。水沼さんも、よければオススメの小説 教えてください!(最近、水沼さんの過去のブログに出てきた Homecomings の『Blue Hour』にハマってます。)

 

ヒコーキはヒコーキ雲を描くために飛んでるとさえ思えたりした

 

竹馬やりたいんだけど場所もないしそもそも竹馬がない

 

バッテリー・ローのワイヤレスイヤホンからさえずり 憧れの人の熱弁 

 

(春木滉平)

 

◎最後に、大好きで これまで何回も読み返している本のこと。前回の桜庭さんからの質問です。

短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」005|桜庭 紀子

○1冊 選ぶなら絶対に 新潮文庫太宰治パンドラの匣で、特に そこに入ってる『正義と微笑』という短編が好きで、繰り返し読んでます。

四月二十四日。土曜日。

晴。きょう朝から一日、学校をさぼった。こんないい天気に、学校に行くなんて、もったいない。上野公園に行き、公園のベンチで御弁当を食べて、午後は、ずっと図書館。正岡子規全集を一巻から四巻まで借出して、あちこち読みちらした。暗くなってから、家へ帰った。(P.37)

この一節をブックオフで読んだ当時、僕は私立高校の1年生で、中学生活は酷いものだったから高校ではちゃんとしよう と決めて、心を入れ替えて頑張ろうとしてたのに、2学期に入って クラスにマジで苦手な人が出来て、学校に行くのがすごく嫌になってました。朝、学校に お父さんのフリをして「息子が体調崩しまして欠席します」と電話をかけて、そのあとトボトボ歩いて、県立図書館に着いたら、本を数冊借りて、城山公園のベンチでそれを読んだり、寝転んだりしてた、それで家に帰ったらサボってたのがバレてて怒られる。そういう時期でした。だから、すごく共感して、「全く同じではないけど 場所も違うし 時代も違うけど、俺みたいな奴って、やっぱりおるんだよね」と思えて、すごく救われました。太宰治の本もっと読もう!と決意する、きっかけにもなりました。

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○『正義と微笑』は 中学生男子の日記、という設定です。有名なくだりがあって、それは主人公の日記に登場する、黒田という中学の教師のセリフ。

勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事でなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。(中略)全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。(P.19)

君たちとは、もうこの教室で一緒に勉強は出来ないね。けれども、君たちの名前は一生わすれないで覚えているぞ。君たちも、たまには俺のことを思い出してくれよ。(中略)「今度の試験のことは心配しないで。」と言って先生は、はじめてにっこり笑った。(P.20)

カッコいい先生だなー。中学の先生になった今、心から そう思います。

○『正義と微笑』、序盤は日記を書くんだ!という やる気に満ちているんだけれど、誰も読まないのになんで書いてるんだろう的な、そういうモヤモヤが 割とすぐに顕出して、それから徐々に日記が ぶっきらぼうになっていく感じ。しばらくすると、急に内容が詳細になったりする。回想したり、聖書を引用したと思ったら、突然 短歌が出てきたり。そのあとの、夢が具体的に定まってからの〈これどうなっちゃうんだ感〉も面白いですけど。正直、繰り返し読むとは言っても、毎回、ちゃんと最初から最後まで通しで読むわけじゃないです。パッと開いて、そこを読む。好きな歌集みたいな読み方ができる、大切な1冊です。

◯明日は陸上大会で、今日はその準備でした。6時間以上、グラウンドに立ってたので、ちょっとクラクラしたし、日焼けもしました(顔が真っ赤!)。熱い中、走ってる少年少女、吹き抜ける風・・・・・・ もう夏が来そう。こういう感じになってくると、ナンバーガールの『透明少女』聴きたくなりますねー。『正義と微笑』の主人公が、もし現代に生きてたら、絶対ナンバガ好きだったと思います!

youtu.be

この曲を、汗かいて歩きながらとか 走りながら とか、自転車漕ぎながらとか(普通にダメだけど)で聴かずに、車のナビにBluetooth繋げて流していると、自分を オトナだなー、と思えて かなり嬉しいです。

 

では! (2024.4.27   20:12)

あすは月曜日。ブラック・デー。もう寝よう。神様。僕を忘れないでください。

太宰治『正義と微笑』より)